PIN detector

    FM-PIN
    FM-PIN たち

Astro-E2 衛星に搭載される検出器は4種類あります。

軟 X 線反射望遠鏡 (XRT: X-Ray Telescope)
X 線マイクロカロリメータ (XRS: X-Ray Spectrometer)
X 線 CCD カメラ (XIS: X-ray Imaging Spectrometer)
硬 X 線検出器 (HXD-II: Hard X-ray Detector)


宇宙物理研究室では宇宙科学研究所・東大などのグループと共同で、 HXD-II 検出器開発を行なっております。
特に我々は、10 - 60 keV 帯域を高いエネルギー分解能で観測できる、 PIN 型シリコン半導体検出器を担当しています。
ここでは検出器の紹介と、実験室をご案内します。


PIN 型シリコン半導体検出器は、10 から 60 keV の X 線を 高い量子効率で観測する目的で、
村上教授を中心に、浜松ホトニクス社と共同で新しくデザインした検出器です。
浜松ホトニクス社は、2002 年のノーベル物理学賞で有名な KAMIOKANDE の光電子増倍管でも有名ですよね (^-^)


高いエネルギーの X 線を光電吸収させるためには、厚みのある 検出器でなくてはなりません。
そのため、PIN は単なる p-n 接合半導体ではなく、不純濃度が極めて少ない シリコンを挟み込むことで、2mm という厚さを達成しています。
デジカメなどで使われている可視光 CCD の厚さが数 10μm ですから、 いわば、シリコンの"お化け"のような検出器なのです。
PIN には逆方向バイアスをかけて空乏層を作るのですが、2mm もの空乏層を 発達させるためには、500V 以上の高電圧をかける必要があります。
高い電圧をかけても正常な動作が確保できるような電極設計になっています。
ちなみに、2mm 厚のシリコン検出器を扱っているのは、 我々の宇宙物理グループだけと言っても過言ではないほどです。


CSA

上の写真は PIN のシグナルを読み出すための高感度アンプで CSA (Charge Sensitive Amplifer) といいます。
これは衛星搭載品ではなく、実験的に作ったエンジニアリングモデルで、 衛星搭載用 PIN の受け入れ試験に用いています。
宇宙研の高橋教授のグループとクリアパルス社が共同で開発しています。


実験室紹介

実験室の中の様子を紹介します。

    真空槽
    真空ポンプ


上の写真は真空装置です。左は真空槽、右は排気系でロータリーポンプと ターボ分子ポンプのタンデムになっています。
宇宙空間で高電圧をかけても異常が起きないかを調べるために PIN の受け入れ試験の中で使用しています。


    恒温槽
    オシロスコープ


上の写真は、左側が恒温槽、右側がオシロスコープです。
PIN の動作温度は -20 度ですので、冷却した中で様々な測定を することになります。実験室の中でも、一番活躍している機材です。
X 線測定を行なう際には、PIN からのシグナルを見るためにオシロスコープも 併用して使います。


米徳大輔、岡田和之:2002/12/21