卒業研究紹介

 
  1. 箇条書き項目 2011年度

小井さんと乘附さんに、X線検出実験やさらなる冷凍機技術の基礎研究を行なってもらいました。とうとう我々のADRでX線を検出できるようになりました!以下に研究題目と要旨を紹介します。ポスターは516号室前の廊下に貼ってありますので、興味のある人はぜひ見に来てください。


  1. 箇条書き項目 乘附 未季「極低温X線マイクロカロリメータ検出器によるX線パルスの検出」


X線マイクロカロリメータは、入射X線光子1つ1つのエネルギー
を素子の温度上昇として測定する検出器である。絶対温度0.1 K以下の極低温で動作させることで非常に優れたエネルギー分解能を実現する。中でも超伝導遷移端での急激な抵抗変化を高感度温度計として用いるTESカロリメータでは、エネルギー分解能とともに応答速度も改善される。我々は将来のX線天文衛星への搭載を目指して、センサの冷却に必要な断熱消磁冷凍機(ADR)と一体で開発を進めており、自作
ADR上でのカロリメータの動作環境を整えてきた。私は卒業研究としてTESカロリメータの動作とX線パルスの検出に取り組み、5.9 keVのX線を検出することに成功し、エネルギー分解能90 eV (FWHM)を得た。講演ではX線マイクロカロリメータの動作原理、X線パルス検出実験とその結果について述べ、結果について議論する。

図の説明:X線マイクロカロリメータの模式図と堅守したX線パルスの例。



  1. 箇条書き項目 小井 教江「断熱消磁冷凍機用熱スイッチの基礎開発」


我々は宇宙X線の精密分光観測を行なうことを目指して、極低温動作(100 mK以下)のX線検出器とそのために必要な断熱消磁冷凍機(ADR)の開発を進めている。ADRは常磁性体を冷媒とし、磁場を用いて磁気エントロピーを制御することで冷却する。その際に冷媒と熱浴間の接続と断熱を切り替える熱スイッチが必要となる。現在我々は機械的な熱スイッチを使用しているが、人工衛星上で使用するには可動部のないガスギャップ方式が適している。私は卒業研究として、ガスギャップ式熱スイッチの製作と評価に取り組んだ。OFF時の性能を決めるステンレスシェルの熱伝導度測定では、ほぼ設計値通りの性能を確認できた。本講演では、ガスギャップ式熱スイッチの動作原理、我々の熱スイッチの特徴、評価実験の結果について説明する。


  1. 箇条書き項目 2010年度

國久君と山本君に、これまで製作してきた断熱消磁冷凍機の性能改善とその評価を行なってもらいました。4年目にして我々のADRも本格的に冷えるようになりました!


  1. 箇条書き項目 山本 亮「断熱消磁冷凍機の性能改善とX線カロリメータの特性評価」


X線カロリメータはX線天文学に画期的な発展をもたらすことが期待されるX線分光検出器で、100 mK以下の極低温下で優れたエネルギー分解能を実現する。無重力の人工衛星上で100 mKを実現するには断熱消磁冷凍機(ADR)が必要であり、我々はその開発を進めている。

本研究では、配線や多層断熱材(MLI)の見直しを行ない、熱環境を改善することで、最低到達温度90 mKと、100 mKで7時間の保持時間を達成することができた。また、ADRの温度制御を行ない、X線カロリメータ素子の抵抗ー温度特性を評価した。講演ではこれらの成果について説明する。


  1. 箇条書き項目 國久 哲平「断熱消磁冷凍機ADRの磁性体カプセルの熱特性評価」


X線マイクロカロリメータは入射X線光子のエネルギーを素子の温度上昇として測る検出器である。優れた分解能を実現するためには100 mK以下という極低温環境で動作させる必要があり、我々は断熱消磁冷凍機(ADR)の開発を進めている。断熱消磁とは、等温状態で磁性体に外部磁場を印加(励磁)してエントロピーを下げ、断熱状態にした後に磁場を取り去って(消磁)、冷却する方法である。

これまでに最低到達温度90 mKを実現し、必要な極低温環境は得られるようになった。しかし、励磁で発生した磁化熱の排熱や消磁後の最低温度到達に数時間かかり、ADRのオペレーションを律速している。このような問題を解決することを目指して、本研究では磁性体カプセルの熱容量と熱伝導度が温度や磁場によってどのように変化するかを調べ、熱特性の物理的理解を試みた。その結果について報告する。



  1. 箇条書き項目 2009年度

谷津君に断熱消磁冷凍機の開発研究を行なってもらいました。ようやく冷えるようになってきました。


  1. 箇条書き項目 谷津 貴裕「断熱消磁冷凍機(ADR)の動作原理と性能評価」


X線マイクロカロリメータは入射X線光子のエネルギーを素子の温度上昇として測る検出器であり、100 mK以下の極低温下で優れたエネルギー分解能を実現する。我々のグループはセンサを100 mK以下に冷却するために必要となる断熱消磁冷凍機(ADR)の開発を進めている。ADRは外部磁場によってエントロピーを制御することで試料を冷却する。無重量下で使用可能であり、高い温度安定性を実現できる。

本研究ではまずADRの動作原理を理解した。次にどれだけの冷却能力が実現できるのか見積もりを行ない、実際に我々が製作したADRの性能と比較した。我々のADRは100 mKまでは冷えたものの、見積もりと比べると十分な性能が出ているとはいえず、その原因についても検討した。



  1. 箇条書き項目 2008年度

瀧戸君に「SQUID素子」に関わる研究を行なってもらいました。


  1. 箇条書き項目 瀧戸 浩之「簡易極低温プローブの製作とX線カロリメータ読み出しのためのSQUIDの動作確認」


X線カロリメータとは入射X線光子のエネルギーを素子の温度上昇として計測する検出器であり、0.1 K以下の極低温で動作させることにより優れたエネルギー分解能を実現する。中でも超伝導遷移端における急激な抵抗変化を温度計に利用するTES (Transition Edge Sensor)型カロリメータは特にエネルギー分解能に優れ、宇宙観測用の精密分光装置として注目されている。TES型カロリメータでは素子を定電圧バイアスで動作させ、抵抗変化に伴う電流変化を計測する。超伝導量子干渉素子(SQUID)はジョセフソン接合を含んだ超伝導リングで、磁場の変化に対して高い感度を有する。SQUIDを利用した電流計は入力インピーダンスが低
く、また極低温で信号増幅を行なうことも可能であることから、TES型カロリメータの読み出し系として最適である。本研究では、1) SQUID素子について理解し、2) SQUIDを4 Kで簡便に評価するための極低温プローブを製作、3) そのプローブを用いてSQUIDの動作確認を行なった。



  1. 箇条書き項目 2007年度

私にとって初めての担当となる卒業研究は、枝村君と和田さんの2人に「断熱消磁冷凍機」に関わる研究を行なってもらいました。


  1. 箇条書き項目 枝村 亮「X線マイクロカロリメータ動作のための断熱消磁冷凍機開発」


X線マイクロカロリメータは入射X線光子1つ1つのエネルギーを素子の温度上昇として計測する検出器で、0.1 K以下の極低温で動作させることにより優れたエネルギー分解能を実現する。回折格子と比べて検出効率が高く、また広がった天体を観測しても性能が劣化しないことから、X線天文学における次世代の精密分光装置として最も注目されている。我々はX線マイクロカロリメータの冷却装置として、断熱消磁冷凍機(ADR)の開発を進めている。私は卒業研究として、1) ADRの動作原理について理解し、2) ADRで冷媒として使用する常磁性体のケースとそれを組み付けるための治具を設計し、3) 期待される冷凍能力の見積もりを行なった。また、4) 使用する金線の低温での抵抗値を測定し、熱伝導率を見積もった。


  1. 箇条書き項目 和田 茜「断熱消磁冷凍機用磁性体の検討と結晶製作」


X線天文学において、次世代の精密分光装置として最も注目されているのがX線マイクロカロリメータである。この検出器は0.1K以下の極低温で動作させることで優れたエネルギー分解能を達成する。そのため、極低温環境を作り出す冷凍機が必要となる。人工衛星(無重力下)でこの極低温環境を作り出せるのが磁場による常磁性体のエントロピー変化を利用した断熱消磁冷凍機(ADR)である。本研究ではADR用の磁性体にはどのような物質が適しているのかの検討を行ない、さらに実際に鉄ミョウバンを用いてさまざまな条件下で結晶の成長を行ない、製作方法を確立した。


左図:液体ヘリウム温度での測定。右図:結晶成長の様子。