学会発表

 
  1. 箇条書き項目  NeXTとSpektr-RG衛星のX線カロリメータによる銀河団の観測計画

○藤本龍一(金沢大)、満田和久、山崎典子、篠崎慶亮、竹井洋、中川貴雄、杉田寛之、佐藤洋一(JAXA)、大橋隆哉、石崎欣尚、江副祐一郎(首都大)、村上正秀(筑波大)、田代信(埼玉大)、北本俊二(立教大)、玉川徹、川原田円、三原建弘(理研)、R. L. Kelley、C. A. Kilbourne、F. S. Porter (NASA/GSFC)、D. McCammon(Wisconsin大)、J.-W. den Herder (SRON)

日本天文学会 2008年秋季年会 (2008年9月11-13日、岡山理科大学)


銀河団は重力により束縛された宇宙最大規模の天体であり、銀河団ガスの温度と広がりはその場所での重力ポテンシャル、すなわち暗黒物質の量を直接的に示している。また、銀河団の個数密度とその時間的発展は宇宙における物質量、 ゆらぎの絶対値、宇宙膨張の加速度を反映しており、観測的宇宙論においても 銀河団は欠かすことのできない観測対象である。しかしながら銀河団同士の衝突合体時の相対速度は数100 km/s程度であり、これまでのX線観測装置ではそ の進化(衝突合体)の様子を運動として直接観測することは困難であった。これを初めて可能にするのがX線マイクロカロリメータであり、2013年頃打ち上げ予定のNeXT衛星に搭載されるSXS (日米蘭) と、2012年頃打ち上げ予定のロシアのSpektr Roentgen Gamma (SRG)衛星に搭載されるSXC (日米蘭独)がある。 これらにより、我々は銀河団形成現場のガスの激しい運動を直接観測し、宇宙が巨大なスケールでダイナミックに進化する様子を確認することができるようになるだろう。

SXSはSuzaku XRSの改良型のセンサを使用し、SXCではXRSのスペアセンサとNeXT 用冷凍機のプロト品を使用する。エネルギー分解能はいずれも半値幅で4--6 eV程度が期待されるが、視野の大きさや有効面積は異なっており、相補的な関係にある。米国においてSMEX MOOに採択され、開発にむけた体制も整いつつある。講演ではSXSとSXCの性能について概観し、銀河団の観測によって期待される成果について述べる。


  1. 箇条書き項目 X線マイクロカロリメータ動作のための断熱消磁冷凍機の基礎開発

○和田茜、佐藤浩介、藤本龍一、村上敏夫(金沢大)、枝村亮(早稲田大)、篠崎慶亮(ISAS/JAXA)

日本天文学会 2008年秋季年会 (2008年9月11-13日、岡山理科大学)


X線マイクロカロリメータは入射X線光子1つ1つのエネルギーを素子の温度上昇として計測する検出器である。回折格子と比べて検出効率が高く、また広がった天体に対しても性能が劣化しないことから、X線天文学の分野において次世代の精密分光装置としてもっとも注目されている。X線マイクロカロリメータを動作させて所定の性能を得るには検出器を0.1 K以下の極低温に冷却しなければならない。 よって宇宙空間のような無重力下でも0.1 Kという極低温環境を実現できる冷凍機として断熱消磁冷凍機(ADR)が必要となる。

金沢大学では、JAXA宇宙科学研究本部や首都大学東京のグループと連携しながら、 将来のX線天文衛星やガンマ線バースト観測衛星への搭載を目指してADRの基礎開発を行っている。ADRの性能は使用する常磁性体の性質に強く依存する。我々は、 結晶の取り扱いにやや注意が必要であるものの、磁気モーメントが大きく結晶成長が比較的容易であるとされている鉄ミョウバンを採用して研究を進めている。 これまでに鉄ミョウバンの結晶成長の方法を確立し、製作した結晶の磁化を測定して断熱消磁を開始する2 Kで理論値の8割以上の磁化を有していることを確認した。 現在は磁性体カプセル内に鉄ミョウバンの結晶を成長させる作業を進めている。 講演では鉄ミョウバン結晶の成長を含めたADRの製作状況と性能評価の結果 について報告する。


  1. 箇条書き項目Spektr-RG衛星搭載X線かロリメータ分光装置SXC

○藤本龍一(金沢大)、大橋隆哉、石崎欣尚、江副祐一郎(首都大)、満田和久、山崎典子、篠崎慶亮、竹井洋、中川貴雄、杉田寛之、佐藤洋一(JAXA)、村上正秀(筑波大)、田代信(埼玉大)、北本俊二(立教大)、玉川徹、川原田円、三原建弘(理研)、R. L. Kelley、C. A. Kilbourne、F. S. Porter (NASA/GSFC)、D. McCammon (Wisconsin大)、J.-W. den Herder (SRON)

日本天文学会 2008年秋季年会 (2008年9月11-13日、岡山理科大学)


Spektr Roentgen Gamma (SRG)衛星は2012年頃にロシアによって打ち上げが予 定されているX線天文衛星であり、主検出器として0.3--10 keVの帯域で全天サーベイを行なうeROSITAと、日米蘭独国際協力によるX線マイクロカロリメータを用いた精密分光装置SXC (SRG X-ray Calorimeter)が搭載される。SXCのカロリメータアレイはSuzaku XRSのスペア(6x6アレイ)で、エネルギー分解能は6 eV (goal 4 eV)、視野が11'x11'と広いのが特徴である(1ピクセルは1.8')。 冷却システムはNeXT衛星のプロト品を使用する(篠崎他、本年会)。打ち上げ後最初の半年間はSXCを主として銀河団や超新星残骸などの個別天体のポンティング観測を行ない、その後4年かけてeROSITAを主として全天サーベイを実施する。全天サーベイ期間もSXCは観測を続け、高温星間ガスの全天分光データを取得する。




  1. 箇条書き項目 連続運転型断熱消磁冷凍機によるTESカロリメータの動作実験

児嶌佑介、○藤本龍一(金沢大)、赤松弘規、星野晶夫、石崎欣尚(首都大)、篠崎慶亮、満田和久(ISAS/JAXA)、神谷宏治、沼澤健則、高橋健太(物質・材料研究機構)、P. Shirron (NASA/GSFC)

日本天文学会 2008年春季年会 (2008年3月24-27日、国立オリンピック記念青少年総合センター)


我々のグループでは、次世代X線天文衛星への搭載を目指してTES型X線マイクロカロリメータ(以下TESカロリメータ)の開発を行なっている。X線マイクロカロリメー タとは入射X線光子のエネルギーを素子の温度変化として計測する検出器で、0.1 K以下の極低温で動作させることによりE/ΔE>~1000の非常に優れたエネルギー分解能を達成することができる。TES (transition edge sensor) は超伝導薄膜の遷移端における抵抗値の急激な変化を温度計として利用するもので、さらに優れた性能と大規模アレイ化の実現が期待されている。

衛星環境等の微小重力下で0.1 K以下の極低温を実現するには、断熱消磁冷凍機(ADR)が使用される。ADRは従来ワンショット運転で使用されてきたが、連続運転型断熱消磁冷凍機(以下cADR)と呼ばれる全く新しいタイプのADRでは、直列につないだ4段のADRを適当な位相で励消磁することによって連続して極低温を作り出し、 さらに1 uWという非常に大きな冷凍能力を実現することも可能であることから、TESカロリメータを搭載する将来ミッションでの利用が検討されている。

今回我々は、物質材料研究機構によって開発が進められているcADRにTESカロリメー タを組込んで動作実験を行なった。このcADRは、必ずしもTESカロリメータ搭載を前提とした設計にはなっておらず、また開発段階であるためにTESカロリメータ本来の性能を引き出すには至っていないが、基本的な動作を確認し、cADR の作る磁 場の影響等の貴重なデータを得ることができた。講演では今回の実験で得られた結果と、今後の課題について報告する。また、航空機を使った無重力下での動作実験も行なったので、その結果についてもあわせて報告する。


  1. 箇条書き項目 NGC4388周辺の広がったX線放射の空間分布とスペクトル

○横田聡、米徳大輔、藤本龍一、村上敏夫(金沢大)、小澤碧、鶴剛、松本浩典(京都大)、岩澤一司(MPE)、深沢康司、白井裕久(広島大)、粟木久光、寺島雄一(愛媛大)、他すざくNGC4388チーム

日本天文学会 2008年春季年会 (2008年3月24-27日、国立オリンピック記念青少年総合センター)


 NGC4388はおとめ座銀河団のほぼ中央に位置するセイファート2型銀河である。この銀河の後退速度は2540 km/sと銀河団の平均後退速度1100 km/sに比べてはるかに大きい。すばるによって、北東方向に35 kpcに及ぶHα輝線が見つかっており、ICMによるISMの動圧はぎ取り(ram-pressure striping)によるものと考えられている(Yoshida et al. 2002; 2004)。 本銀河は銀河団(ICM)の相互作用によって銀河の星間物質(ISM)が銀河団空間へ取り込まれていく様子を研究する上で貴重なサンプルである。

 すざくによる観測で、Hα輝線放射と一致する位置から35 kpcにわたる広がったX線放射が 検出され、温度〜0.6 keVの衝突電離プラズマからの放射と矛盾しない結果が得られた(小澤他、2007年春の年会)。 我々は空間分布を含めてさらに詳しい解析を行った。その結果、Hα輝線と一致する広がったX線放射は0.6--1.5 keVのエネルギー帯で顕著に見られるが、0.6 keV以下と1.5 keV以上ではほとんど目立たなくなること、またそれ以外にもNGC4388周辺には温度と輝度の異なるX線放射領域が複雑に分布していることがわかった。 本講演ではこれらの結果について詳しく報告し、X放射の起源について検討する。


  1. 箇条書き項目 「すざく」による超光度赤外線銀河Arp 220の観測

奥野晋也、○藤本龍一、村上敏夫、米徳大輔(金沢大)、岩澤一司、L. Gallo、G. Hasinger (MPE)、寺島雄一、粟木久光(愛媛大)、穴吹直久(大阪大)、A. Ptak、C. Kilbourne、岡島崇、J. Reeves (NASA/GSFC)、R. Griffith (CMU)、小賀坂康志、幅良統(名古屋大)、上田佳宏(京都大)、山崎典子(ISAS/JAXA)、P. Ranalli (理研)

日本天文学会2007年春季年会 (2007年3月28-30日、東海大学)


 Arp 220は近傍(z=0.018)に存在する代表的な超高度赤外線銀河(ULIRG; LIR>1012 L太陽)である。その膨大な遠赤外線放射の起源はAGNもしくはスターバーストのいずれかと考えられるが、どちらが支配的であるかはまだはっきりしていない。透過力の強い硬X線はダストに埋もれたAGNの観測に最適であり、10 keV以下の帯域ではあすか、ニュートン等による高感度観測が行なわれているが、遠赤外線放射を説明するに足るAGNの存在は確認されておらず、AGNが 支配的であるならばほぼすべての立体角を>~1024 cm-2の柱密度の吸収体で覆われていることになる。10 keV以上の帯域ではこれまでにBeppoSAXによる観測がなされており、AGNが支配的であるためにはNH>~1025 cm-2が必要であることが報告されている(Iwasawa et al. 2001)。

すざくは10 keV以上の硬X線に対して過去最高の感度を有しており、その特徴を生かしてSWG観測期間中に100 ksの観測を行なった。現時点ではHXDのバックグラウンド推定の系統誤差が約4%あり、その範囲で有意な信号は得られなかった。AGN直接光に対する上限値はBeppoSAXと同程度である。ただし、HXDの較正が進めばバックグラウンド推定の系統誤差が小さくなり、さらに厳しい上限値が得られると期待される。XISによる10 keV以下の観測では、ニュートンによって報告された6.7 keVのHe-like鉄輝線の存在(Iwasawa et al. 2005)を確実なものとした。これは2--10 keVの放射が光学的に薄い高温プラズマからの放射であることを示している。