星形成歴について

GRBの光度(Lp)とは、観測されるエネルギーフラックス(Fp)を用いて
Lp = 4πd2 Fpとなります。ここで「d」は天体までの距離です。

Ep - Lp 関係では、
Lp = α×[Ep (1+z)]2 となるので(z は赤方偏移という距離に関係した量)、
なので書き換えると
4πd2 Fp = α×[Ep (1+z)]2
d/(1+z) = [αEp/(4πFp)]1/2
と書くことができます。
これは実はとても重要な事を意味しています。
右辺は観測から得られるピークエネルギー(Ep)とフラックス(Fp)と係数(α)
だけで記述されています。一方で、左辺は距離に関する量を表しています。
つまり、観測で(Ep, Fp, それとα)を測定できれば、
GRBの距離を概算できることになります。

通常では、すばる望遠鏡やKeck 望遠鏡のような大きな望遠鏡を使って、
GRBの可視光残光や母銀河を観測し、分光して距離を求めるのですが、
そういう大掛かりな観測をしなくてもGRBの距離が割り出せてしまうのです。
これが Ep - Lp relation の強力な性質になります。

下の図は、CGRO衛星で観測した1500個のGRBのデータ解析を行って、
Ep - Lp 関係からGRBの距離を求めた図になります。
横軸はGRBの距離(赤方偏移で表している)、縦軸は光度(Lp)です。
この図を見ると、赤方偏移が z=10 (130億光年)より遠くでも、
GRBが発生しているようだということがわかります。


このような距離分布から、GRBの発生頻度(発生歴)を求めることができます。
その発生歴を求めるには、少し複雑な数学的手法が必要になるのですが、
それは論文を読んでいただくとして、結果(下図)だけをお見せします。
横軸に赤方偏移(GRBまでの距離)、縦軸に単位体積あたりのGRB発生頻度を
示しています。



このGRB発生頻度歴から読み取れることは、
「宇宙誕生から間も無い頃の宇宙でもGRBが沢山発生していた」
ということです。
つまり、宇宙が誕生して間もない頃に、GRBを発生させるような重たい星が
沢山作られていたということを示唆しています。

2009年時点で、大型の観測装置を使ったとしても、赤方偏移が6または7の宇宙しか
探ることはできていませんので、赤方偏移12とかという、とてつもなく遠い宇宙(初期宇宙)を
観測できているということは驚きです。
そしてその頃の宇宙像として、「重たい星が沢山形成されている」という証拠を
定量的に示すことができました。
スーパーコンピュータを使ったシミュレーションでも、
「宇宙で最初にできた星はとても重たいだろう」と予想されていますので、
この観測結果と合致しています。
次世代の大型望遠鏡を使って初期宇宙を観測し、より詳細な様子が見えてくるのが楽しみです。