一般に光子の電場ベクトルの振動方向を「偏光方向」と定義します。ガンマ線光子の主な相互作用は、光電効果とコンプトン散乱です。これら2つの相互作用には偏光と絡んで次のような特徴があります。
■光電効果:光電子は電場の振動方向に飛び出しやすい
■コンプトン散乱:光子は偏光方向と垂直に散乱しやすい
光電効果が支配的な低エネルギーのX線・ガンマ線に対しては、光電効果で発生した光電子を追跡することで偏光を測定しますし、コンプトン散乱が支配的なエネルギー帯域のガンマ線ではコンプトン散乱した光子の方向分布を測定することでガンマ線の偏光を測定することができます。GRBからの数100keVの光子について考えると、コンプトン散乱型が有効となります。

右に示したのはGAPの概略図です。
中央に差し渡し140mmの12角形のプラスチックシンチレータを置き、その周囲を囲むように12枚のCsIシンチレータを配置します。プラスチックシンチレータは軽元素でできているのでコンプトン散乱し易く、プラシンチと同期したCsIのイベントを測定することで、ガンマ線光子の散乱強度分布を測定することができます。GRBはいつ、どこで発生するかわからないので広い視野で待ち構えるタイプの検出器になります。可能な限りバックグラウンドを軽減したり、太陽フレアを避けるためにGAP全体を鉛でシールドする予定です。12角形というのは非常に対称性の高い形状ですから、散乱強度分布を詳細に測定するのに向いていると言えます。

GAPはイカロス衛星の反太陽面側に取り付けられるため、深宇宙を常にモニターし続けることになります。ある時、GRBを検出したら偏光測定を開始します。

GAPの概念図