ガンマ線バースト偏光検出器
(GAmma-ray burst Polarimeter:GAP)
私たち金沢大学と山形大学を中心とするグループは、図1に示すようなガンマ線の
偏光を検出する観測装置 (GAmma-ray burst Polarimeter : GAP) を作り、
IKAROS に搭載することにしました。IKAROSが大きな帆を開いて宇宙を進んでいく最中に、
ガンマ線バーストを観測するというわけです。写真の円筒形のものが観測装置です。
観測装置の直径は17cmで、高さも17cm、重量3.7kg、消費電力 5W の
とても小さな検出器です。
真ん中に大きなプラスチックシンチレータ、その周囲を 12 個のCsIシンチレータで
取り囲んであります。ガンマ線は「偏光方向と垂直に散乱しやすい」という
性質があるので、プラスチックで散乱したガンマ線を周囲のセンサーで検知して、
散乱分布を測定します。
GAP検出器は、ガンマ線を受けて発光するシンチレータと呼ばれる結晶と、
その発光を検知するための光電子増倍管で構成されています。上図の右側に
示しているように、中心には大きな12角形の軽いプラスチックシンチレータ、
その周囲には重たいCsIシンチレータが配置されています。偏光したガンマ線は、
偏光方向と垂直に散乱しやすいという性質があります。プラスチックで散乱した
ガンマ線が、CsIで吸収されるという、同時に2つのセンサーが検知した信号のみを
集めると散乱強度分布を測定できます。この分布がある方向では強く、
それと垂直な方向で弱くなっている場合、入射してきたガンマ線は偏光していると
言えるわけです。
上図は偏光ガンマ線を用いた実験結果を示しています。
横軸はガンマ線の散乱角度で、縦軸が外周のCsIで検出したガンマ線の数です。
角度に応じてガンマ線の強度が変化しているのがわかります。このような変化を
専門用語でモジュレーションといいますが、ガンマ線バーストを観測した時に
モジュレーションが見られたなら、偏光していることがわかるわけです。
偏光の度合いや、その時間変化を調べることで、ガンマ線バーストの放射
メカニズムを調べようとしています。
実は、ガンマ線の偏光観測というのはほとんど例がありません。
X線で一番明るい天体の一つである「かに星雲」や、非常に明るいブラックホール
候補天体「はくちょう座X-1」からしか検出されていません。ガンマ線の偏光観測は
とても難しいのです。
最近になって検出器の性能が良くなったこともあり、世界中の研究者達が、
もっと暗いX線天体や、宇宙の果てから来るガンマ線バーストの偏光を測定しようと、
人工衛星計画を立案しています。世界的にはまだ1つも実現していない中、
IKAROSに搭載されているGAP検出器が先陣を切って宇宙へ飛び立ったわけです。
GAPは小さい観測装置ですが、とても挑戦的な実験で、ガンマ線バーストの
偏光観測に成功すれば一級の科学成果となるはずです。是非、注目していてください。