もう一つ、GRBを用いた宇宙論研究にも大きな可能性が秘められています。GRBのガンマ線
スペクトルに見られるピークエネルギー
(Epeak) は、GRBの特性を示す重要なパラメータであると
考えられています。この
Epeakと光度や全放射エネルギーとの間に強い相関関係が存在することが
知られています
(Yonetoku et al. 2004, Amati et al.2002)。また、近年、相関関係のバラつきを補正する
パラメータの候補が発見されています
(Tsutui et al. 2009)。これらの相関関係を用いることで、
Ia型超新星やその他の天体現象では探ることが極めて難しいz>2の初期宇宙において、GRB独自で
ハッブル図を描くことができ、かつ宇宙論パラメータ(Ω
mやΩΛ)の測定を行えます。

 上図(右)には本ミッションで得られる制限の予想についても重ねて示してあります。
青の等高線は、現在の
557個のIa型超新星の観測から得られる制限、紫色は現段階で
精度よく
Epeakが測定されたGRBを用いた場合の制限です。本ミッションで、100例の
GRBについて赤方偏移を同定し、それらのEpeak5%の精度で決定できれば、赤の等高線で
示すように非常に高い精度で宇宙論パラメータを測定できるようになるはずです。
これにより
WFIRSTのようなミッションと共同で、「暗黒エネルギー」を意味するΩΛ
時間変化を探れるようになるでしょう。暗黒エネルギーの起源や素性は全くの謎であり、
その解明は
21世紀物理学において最重要課題です。GRBを用いた天文学から、その難題に
挑戦したいと考えています。そのためには
MeV帯域まで感度のあるスペクトロメータを
搭載して
Epeakを詳細に測定することが重要で、GRBの特性を総合的に理解すると同時に、
GRB独自の宇宙論を展開したいと考えています。