赤外線望遠鏡 (ISAS Telescope)

    ISAS-DOME
    ISAS-DOME

神奈川県相模原市にある宇宙科学研究所 (ISAS) の屋上に、 1.3m の赤外線望遠鏡があります。 上の写真は、左が望遠鏡で、右が観測ドームです。
ここでは、我々の観測目的と望遠鏡装置の紹介をします。


ガンマ線バーストは、宇宙遠方で生じる超巨大爆発現象 であることは既に述べました。
その中の一例である GRB990123 というイベントは、z = 1.600 という距離 (〜100 億光年)で発生したことがわかっています。
100 億光年とは…すごい距離としか言いようがありませんね。
それほど遠方で発生したにも関わらず、実視等級で 8.9 等級まで 明るくなったという観測例が報告されています。つまり、
初期宇宙を観測するための明るい光源として、 ガンマ線バーストを利用できる
のです。

宇宙物理研究室で狙っているガンマ線バーストは、とてつもなく遠い z = 10 という距離で発生するものです。
この距離を決定するために、水素の Lyman-α break というスペクトル 構造に着目していますが、
大きな赤方偏移の効果によって、この構造は近赤外線領域へと シフトしてきます。
ですから、遠いガンマ線バーストを明るいうちに観測し、なお且つ距離を 測定するためには、
即時応答望遠鏡システムの開発赤外線スペクトル測定用検出器の開発 が重要な鍵になってくるのです。
我々の研究室では、上のような着眼の下で赤外線望遠鏡の開発を行なっています。


望遠鏡と私

我々の 1.3m 赤外望遠鏡は、国内では最大級の大きさになります。
みなさんは『すばる望遠鏡』のような 8m クラスの巨大望遠鏡と比較して、 1.3m を小さいと感じるかもしれませんね…
ですが、我々はこの 1.3m 望遠鏡を独占して、ガンマ線バーストのためだけに 使用することができるため、
バースト発生後、極めて早い時間から観測を行なうことができるのです。 『すばる』のような大きな望遠鏡ではそうは行きません。


実験室紹介

宇宙研屋上ドームは、望遠鏡のあるドーム室と、望遠鏡制御を行なう制御室に分かれています。
ここでは主に、望遠鏡制御に用いているシステムの紹介をします。


    望遠鏡制御装置
    望遠鏡


上の写真で、左側は三菱製の望遠鏡制御装置で、望遠鏡をリモートコントロール するためのものです。


    RT-Linux
    制御画面


上の写真左側は、三菱制御装置とやりとりするための制御 PC です。 man-machine インターフェースになります。右側はモニターです。
我々の望遠鏡は経緯台方式を採用しているため、天体の(α,δ) 座標を、 現在時刻における Az (回転)と Al (傾き)に換算して出力します。
通信インターフェースには RS-232C を採用し、10 Hz の頻度で 通信を行ないます。
また、現在の時刻を正確に把握し、優先的に制御処理を行なわなくては ならないために、
制御用 PC には RT-Linux を用いています。
これらの制御システムについては開発の最終段階に来ています。 また、現在までに可視光 CCD での撮像は行なっております。


今後は、目的である赤外線観測用に検出器開発を行なっていく予定です。
具体的には、 NICMOS センサーおよび 読み出し系(IR コントローラ)グリズム赤外分光器
可視光分光器可視光←→赤外線スイッチングミラー、 そして、 金沢大学から ISAS 望遠鏡の遠隔操作 です。



米徳大輔:2002/12/24